iTunesの楽しみとして、ラジオを聴いたり、CDをたくさん読み込んでMacintoshをジュークボックス化したりなど、これまでのCDとCDプレイヤーではできなかった、新しい音楽への関わり方を紹介してきました。いや、ジュークボックス化する話はまだしてなかったっけ。それについてはまたいつかするとして、今回お伝えするのは、アップルの音楽屋さん、iTunes Music Storeについて。これもまた、新しい音楽との関わり方を感じさせてくれるものでありますよ。
本国アメリカでは、2003年4月28日にスタートしたiTunes Music Store。その姉妹店が2004年6月15日に開店しました。ただしフランス、ドイツ、英国向けのサービス。日本版はいったいいつになることかまったく分からないという、悲しい状況は以前と変わらずです。一応日本でも2004年にはスタートさせたいという意向はあるらしいのですが、レコードレーベル各社との折り合いが付かず、どうにもうまくいきそうにない感じがして、気落ちするこの頃。フランス移住を本気で考えようかなどと、馬鹿なことを思わざるを得ません。
iTunes Music Storeの便利そうなところは、普段音楽を聴いている環境からスムーズに音楽を購入に移れる使い勝手のよさでしょう。なんといってもiTunesで直接ストアにアクセスしてブラウズして、視聴もできて、そして曲を購入ボタンを押せば完了。それだけでライブラリに曲が追加されるというのでしょう。
iTunes Music Storeの利用には、サービス対象国の住所で登録されているクレジットカードが必要なので、残念ながら純日本人の僕には、利用したくてもできないという歯ぎしり状況が発生しています。アップルへの登録住所をたばかるくらいならなんとかなっても(いわゆるプリペイドカードを使っての購入方法ですね)、架空住所でクレジットカードを作るというのはいくらなんでも不可能ですから、やっぱり今は我慢するほかありません。
アメリカ本国では1曲99セントでの提供ですが、ヨーロッパ版はどうなのでしょうか。ヨーロッパでの価格は、仏独は0.99ユーロ、英国では0.79ポンドに設定されています。本日時点での通貨レートで見ると、本国は109.8円、仏独は132.3円、英国は159円、結構開きがあって驚きます。これはつまり、日本では150円で提供という可能性もあるということですね。正直1曲150円でも充分安いと思いますが、できれば120円くらいになってくれると嬉しい。この辺の価格設定、いったいどうなるでしょうね。
さて、価格以上に気になるのはDMR(デジタル著作権管理)がどのようになるかということです。実をいうと、アップルのDMRは非常に緩やかです。購入した曲は5台までのコンピュータで認証可能(つまり聞ける)ですし、iPodへの転送やCDの作成なども自由。個人的複製を含めた利用者の権利が尊重されています。
ところが、このところ相次いでスタートしている日本発ミュージック・ストアはどうかというと、このDMRが非常に厳しくできていて、購入曲はそのPCでしか聞けず、また認証の解除・再認証もできないため、機器変更どころか、OSのアップグレードや再インストール程度のことで、それまで購入してきた音楽資産がパーになります。CDの作成は3回まで大丈夫とはいうものの、PCで音楽を聞くというのはそういうことではないと思う。これからの音楽聴取は、CDといった物理メディアから切り離されて、音楽というソフト(データ)主体に移行していく傾向にあります。iTunes Music Storeひいてはアップルの考えている音楽シーンというのも、こうしたソフトウェア指向でありましょう。なのに、日本ではいまだにCDという物理的な拘束から離れることができずにいるのです。
コンピュータという環境に親しんでしまった僕という人間にとっては、特定のメディアやアプリケーションに依存するデータというのは不自由で、それだけでもう魅力のないものです。多様な環境に対応しうる可能性を失わしめて、結局は過去の遺産、しがらみに束縛されるくらいなら、僕はもう音楽なんて購入しない。音楽というソフトと録音メディア(ハード)の蜜月時代は、レコード盤がCDに駆逐されたときに終わったのであり、CDのごときものは、来たるソフトウェア中心の時代へのつなぎに過ぎないと私などは思うのです。
そんなわけで、日本版iTunes Music Storeの開店を一日千秋の思いで待っている僕ですが、もし日本ではiTunes Music Storeの理想がねじ曲げられてしまうようなことになったら、その時はもうこの国のことはあきらめてしまおうと思います。
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