動揺

 連日伝えております、勝手一万円集金問題ですが、少しずつ動きらしいものが見えてきた模様です。国民生活センターや総務省が動いたことが大きかったのかも知れませんが、それはつまりはこの件を問題だと思った人間がそれだけあったということの裏返しでもありましょう。というか、この事案ってどれくらいの広がりを持っているんだろう。この事案の問題は、事前に通告することもなく、勝手に請求、口座から引き落としたところにあります。私は12月29日に引き落とされて、気付いたのは年が明けて1月5日、一週間かかっています。けれど、これはたまたまでした。昨年末にちょっと多額の引き落としがあったため、口座の状況を心配していた。そして、数万の手持ちがあったから、それを早めに預け入れたいと思っていた。こういう事情があったから、年明け最初の出勤日である5日に記帳したのです。もしそうでなかったら、私は次の給料日まで記帳しなかったはずで、ということは今の時点ではまだ気付かずにいただろうということです。気付くのは来週かな、再来週かな、そんな状況であったのですね。

 この事案に関しては、まだ気付いていない人間も相当数いると思われます。なのに、関係各所はこの件を重く受け止めて、しかも単発の事案ではなく、広範に渡る事件性の高いものとして認識している。それだけ、相談や抗議の件数が多かったということなのでしょう。しかし、その数もまだ一部に過ぎないわけで、来週の明けた火曜日には、さらに多くの人間が気づく。その翌週には、さらに気付いた人が増える。本当にどれだけの広がりをもっているのだろう。数千人単位? それとも万単位? いずれにしても尋常ではありません。

 私には、問題企業のサービスを受けている直接の知り合いはいないのですが、Blogを通じた縁で何人かのユーザーを知っています。1月5日、その人たちに、通告なしに引き落としがなされるトラブルが発生していると連絡をしたところ、そうした出金は確認されず、意外に思っていました。しかし、掲示板等に寄せられる被害の報告を見ていると、なんとなく出金された人の共通点のようなものが見えてくるように感じられて、それはなにかといいますと、会報を購読している会員であるということです。接続サービスを利用している人、ホスティングを利用している人、それらはまちまちであったのですが、会報を購読していた人は多く、しっかりと確認したわけではないですが、全員がそう? そんな印象があるほどに、みな会報を購読している、あるいは送付されていたユーザーばかりであったのです。

 ここは、通販もやっているといっていました。それはコンピュータをメンテナンス契約と一緒に販売するというものであったようで、そのメンテナンスにかかる費用をもって、会報の購読会員としていたようであるのです。そして、その年会費を自動口座払込やクレジットカードで支払っていた人間がやられた。もちろん、これが本当かどうかはわかりません。ですが、そういうことなのではないのだろうか、そのように私は感じています。

 さて、役にたたない考察はどうでもいいですね。私の状況を申し上げます。なんら進展なしです。ホスティングの解約手順に関する問い合わせにはいまだ返信なし。また、返金依頼に対する返事ももらっていません。ただ、今日の午後に、返金依頼専用メールアドレスが用意されて、なのでこちらにその旨の依頼をメールにて投げておきました。

 そんな夕刻、ちょっとした騒ぎがありました。突然、問題企業のサイトにアクセスできなくなり、それと同時にホスティングされているサイトやメールにもアクセスできなくなったのです。これは焦りました。まさか、いきなりサーバから消えるとは思ってもいなかった。だって、サーバにアクセスできなくなったら、誰でも異常事態と気付きます。となると、逃げる時間を稼げない。逃げる時は、普通の状態を装って、誰も異常に気付いていないその隙に逃げるのが普通です。それを、問題が発生していますよ、なんて大声で知らせるような真似は不自然です。一体なにが起こっているのか、その状況のわからなさに動揺が走りました。まいりましたよ、これは終わったかも知れません、職場のSEさんにそういったら、きっと機材がもう叩き売られてるんですよ、そういわれて、そうか! その可能性には気付かなかった! って、それもまた不自然ですから。いくら現金が必要になったからといって、データセンターに収容されている機材を、売ります! 買った! みたいにすぐさま現金化できるわけはないんですから。

 この異常状況は一時間ちょっと続いたみたいですね。その後、徐々に回復していったようで、まずは一安心したわけですが、多分これ、DNSあたりが死んだんじゃないかなあ。ドメインの名前解決ができなくなって、サーバにアクセスできなくなった、そんな感じがしました。しかし、この機器故障は最悪のタイミングで起こった、そう思います。ただでさえ、倒産するのじゃないか、逃げられるのではないか、そうした不安を抱えているところに、場合によっては即座にデータを失いかねないと印象づけてしまいました。私は、さっきもいいましたように、サーバは会社が倒産しても動き続けるだろうと思っていましたから、データの保全をしていませんでした。主要なwebサービスに登録しているメールアドレス、それをプロバイダ発給のものに変更したくらいでした。こうした感覚でいた人も多かったのではないでしょうか。しかし、それでは甘いかも知れない。このトラブルは、ユーザーの危機感を不必要に煽ったと感じています。

 たとえ会社が潰れたとしても、というか事業継続が可能とは到底思えないんですが、ホスティング等のサービスは、ユーザーごと別の会社に引き継がれるんじゃないか、私はそんな風に思っていたのですが、あるいはそうであって欲しいと願っていたのでしょう、ですがそんなどころの話ではない。動けるうちに、信頼できるところに逃げないと取り返しがつかなくなる、そう思ったのは事実です。きっと大半の人が、逃げる準備をしている。ドメインを、回線を、データをどこに移そうか、どういう選択が現状におけるベストであるか、戸惑いながら、焦りながら、自分にとっての答えを探しているのではないかと思います。

 そして、もちろん私もそうしたひとりであるわけです。


<   >

わたしの愛した機械へ トップページに戻る

公開日:2009.01.09
最終更新日:2009.01.09
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。