フランス語の授業も三回目にはいって、僕もずいぶんとその雰囲気、やり方に馴染んできました。フランス語も、最初に比べるとずっと聞き取れるようになってきてますよ。やっぱり、目的意識があると違うなあ、なんて思うこの頃。その目的というのが、授業についていける、というのがちょっと微妙。なんか、小学校の通知簿に書いてある到達度みたいだ……
ともあれ、三回目の授業も開始。さすがゴールデンウィーク直前の授業だけあって、生徒はたった三人だよ。フランス語でいえば、Il y a trois d'étudiants. ってとこ。でもそのおかげで、一人あたり単価は高騰です。ものすごくテンポも速く、当然密度も高い。充実した授業が受けられました。めっちゃ、ラッキーです。
授業終了後は、来月曜からフランスにいくという人の話や、先達て僕が撮ってきた四天王寺舞楽の写真で、ちょっと盛り上がった。フランスにいくという人に関しては、正直かなりうらやましいのだ。僕はフランスにはいったことはないが、きっとフランスもよいだろう。昨年のイタリア旅行以来、僕の心はまだイタリアをさまよっているようなので、ちょっとイタリア以外の素晴らしいところを知らせてやりたい。だって、今もイタリア的なるものに触れるたびに、あのわずかのイタリア体験を思いだしてしまうのだから。
四天王寺舞楽に関しては、少々の説明も加えたんですが、うまく分かっていただけたのだろうか少し心配。でも、多いに喜んでいただけたので嬉しかった。いや、つまんない写真なんですけどね(だって、舞楽そのものは一枚も写ってないんですから)。
さて、最近僕はフランス語に慣れる目的で、いろいろな策を講じています。そのうちのひとつとして、フランスのシャンソンに多く触れようというキャンペーンを実施。それが功を奏しているのかどうかは分かりませんが、まったくの無駄だとは思いませんよ。
フランスのシャンソンキャンペーンは、聴こうと歌おうのふたつで構成されています。聴こうは、音楽よりもむしろ言葉に耳慣れようというもの。歌おうは、歌詞をとにかく覚えて、ついでに文法や成句も覚えちゃおうというもの。まあいうまでもなく、自明のことですよね。
歌を聴くのは普段からやってることなので、取り立てて苦になるようなものではありません。寝る間際に、買いためてあるフランスの歌のCDから、好きなのを一枚選び出して、聴きながら寝る。寝入るまでが、フランス語の聞き取りの時間です。
聴くのは、やはり好きな曲、歌手のものがいいでしょう。でも言葉を聞き取らねばならないわけですから、あんまりに速い曲だと、ちょっと大変です。ということで、お勧めはパトリシア・カースとかクレモンティーヌ。ちょっとスローなテンポで、歌詞も聴きやすいです。曲が美しいところもいい。ただ気をつけて聴いていないと、知らないうちに英語やスペイン語を聞き取っているかも……
僕が好きなのは、エンゾ・エンゾとかパトリック・ブリュエル。加えてアンナ・カリーナなんかも。とにかく好きな歌手を見つけたら、その歌手のすべてを聴いて聴いて聴ききってしまうくらいのつもりでとりかかるのがよいでしょう。覚えてしまうほどに、ですよ。覚えれば、一緒に歌えます、よね。
比較的大きめの、輸入盤を扱っているCDショップが狙い目です。幅広く商品を集めるために、中には売れ残ってしまったものも出てしまう。不良在庫を抱えていると、資産として課税対象になっちゃうんですよね。だから決算期が近づくと、一気に捨て値で放出されるわけです。いわゆるワゴンセール! そう、僕はワゴンセールが大好きです。
一枚千円とか、場合によれば五百円なんて事もあります。山ほどのCDが突っ込まれたワゴンを左端から右端まで、フランス語のタイトルがついているのを目印に、とにかく一気に走査してやる。見付け次第確保、買う買わないは関係なしに、とにかく確保だけしておく。走査終了後に選別すればいいんです。
こうやって手に入れたものが結構あります。名も知らぬ、ジャケットに片仮名で「アイシテル」と書かれたものや、結構拾いものだったプログレ風の一枚。もちろん中には、ほぞを噛むようなものもありますけど、それもまた経験ですよ。
残念なのが、こういうワゴンセールをよくやってくれていた店が、事業縮小から輸入盤を扱わなくなったこと。不況はいやですね。ともあれ、輸入盤のワゴンセールは結構狙い目なので、見付け次第飛び込むことをお勧めします。
でも、僕の生活圏内では、やめてくださいね。僕の取り分が減っちゃいますから ;-)
覚えるほどに聴いたら、後は歌ってしまいましょう。聴いたまま歌うのもいいですが、出来ればスペルも一緒に覚えてしまう。スペルと発音の関係を確かめたり、うろ覚えの発音をスペルから補足しておくのも、重要な勉強です。そして構文、成句、便利な言い回しを覚えちゃいましょう。
例えば……、エリック・サティの『あなたがほしいの』を例にとってみましょう。
JE TE VEUX
Paroles de Henry Pacory
J'ai compris ta détresse,
Cher amoureux,
Et je cède à tes vœux,
Fais de moi ta maîtresse.
Loin de nous la sagesse,
Plus de tristesse,
J'aspire à l'instant précieux
Où nous serons heureux; je te veux.
『あなたがほしいの』の第一節です。さして難しいフランス語ではないので、初学者でも辞書を片手に読み解けるものと思います。
さて、この節には意外と便利な表現がいくつか含まれているのですよ。例えば、第四行目の Fais
de moi ta maîtresse.
なんかがそう。動詞 faire
は、英語でいうところの do あるいは make
にあたる、フランス語における重要単語です。faire は基本単語であるため、その用法は多岐にわたっていて、実に覚えにくい。そのうちのひとつが、上記の詩で用いられている、faire
A de B です。
faire A de B は、BをAにする、という表現です。歌詞を見ると、Aとde Bが倒置されていますが、意味は変わりません。「私(B)」を「あなたの恋人(A)」に「して(faire)」という、命令(依頼)の表現であるということが分かるでしょう。
実はこの表現は実に便利でして、Aを疑問詞に置き換えることで、そのものをどこへやったかという文になります。例を出しますと、
Qu'est-ce que j'ai fait du fromage? (私は)チーズをどこへやった?
という文章が、簡単に作れるというわけです。
こういう便利な表現が、歌には沢山盛り込まれていたりします。上の例では他に、loin と plus の使い方とか、sagesse とか tristesse という単語を覚えたりしました。 他には、『夢見るシャンソン人形』で比較表現を覚えたりも。
このように、歌うことで単語と用法と発音を同時に覚え、かつ忘れにくいというメリットがあります。加えて、なにか宴会なんかで披露できるという、ちょっとしたおまけもあっていい感じ。実践している人も多い、フランスのシャンソンキャンペーン。実にお勧めです。
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