フランス語学校には、困ったことに夏休みがあるのです。八月一杯は通常の授業はお休み。集中講義なんかもあるのですが、そこまでの余裕はなかったので、参加はしませんでした。つまりこれは、夏のあいだフランス語環境を失うということにほかなりません。正直、これには困りました。この夏のあいだも、フランス語での対話ができる環境を得たい。できれば夏といわず、ずっと。とのことから、フランス人の導入を現実のものとしたいと思ったのです。でも、一体どこにフランス人がいるというのだろう。あては、とりあえず国際交流会館くらいしかありませんでした。
とまあこのあたりまでは、以前にもお話したことでございます。
さて、僕が国際交流会館に期待しているのは、入り口を入って左側にあるメッセージボード。教えます、売ります、そして知人友人募集の三つのカテゴリがあって、その一番最後が今回の目当てというわけです。
しかし、残念なもんですね。募集の紙はたくさん張られているというのに、そのほとんどが英語。端から見ていっても英語英語英語、まれに中国語、その他、そしてフランス語はたったの一枚。いや、フランス語は他にもあったんですが、それは日本人側からのアプローチだったりするわけです。それはいらない、なにしろフランス語を学びたい、知りたい一心であるわけでして、フランス語学習友の会を結成したいわけでもないんですから。なのでそういうのは次々と除外していく。最後に残ったのがフランス人、一枚だけ。これは切ない。
一応説明をば、誤解は好みませんので。フランス人を探しているとはいいましても、別にフランス国籍を有する人を求めているのではなく、フランス語を母語あるいは公用語とする地域に育った人(つまり一言でいうとフランコフォン)との出会いに期待しているわけです。なので、僕にはそれが、カナダケベック地方の人でも、ベルギー人でも、セネガル人でもカメルーン人でもよかった。でも、残念ながら本当にフランコフォンからの募集は、件の一枚しかなかった。それはやはり残念なのであります。
なので、とりあえずその一フランス人氏にメールを打つことにしました。こちらから張り紙を出しても悪くはないのだろうけど、とりあえずはまず接触してみようとした。それがつながればよし、つながらなければその時に広告を出せばよい。あまり焦るのはよそうと思ったのです。
国際交流会館の最寄り駅は、京都市営地下鉄の蹴上駅。そこから地下鉄で三条まで出て、英国風パブでメールの文章を作成することとありなりました。しかし、なぜ英国風パブなのか。ここは、イギリス人にかぎらずいろいろな国籍言語の人があつまるので、結構楽しいのですよ。フランス人が来るといいなとも思ったのですが、いかんせん平日のまだ早い時間だったこともあって、英語人が数人と後は全部日本人という結果。やはり残念なのであります。
さて、メールの本文となりますと、やはり最初は自己紹介をしないわけにはいきますまい。しかしなにを書けばいいのだろう。僕は自己紹介が苦手で、こういうときになにをいうべきかで、いつもいつも迷い悩むのです。なので非常にシンプルに、募集の紙を見つけたこと、フランス語学習者であること、年齢、フランス語を話す機会を与えてくれたら嬉しいということ、日本語学習の助けもできるだろうということ、そしてメールを送ってほしいということを書きました。
で、メールを打ったのが翌日の朝、金曜日。今日でもう三日が経ってしまいました。返事は、―― やはり募集のメッセージも書いておくべきだったでしょうか。
フランス映画好きのわたくしは、劇場で見て好きになった映画はDVDでも買ってしまうことがたびたびです。なので『アメリ』のDVD、買っちゃいました、缶入りのやつ。で、見ました。素晴らしいです、面白いです、これは傑作とあらためて確信した次第であります。これをまだ見ていない人は、レンタルでもいいので、ぜひ見てみてください。お勧めです。
いや、映画の宣伝をしたいわけではなかった。このDVDというのが、実に素敵な仕様を持っていたというのをお話したいのでした。『アメリ』DVD版には、通常のフランス語音声のほかに、日本語吹き替えと、そして監督によるコメントが収録されています。このコメントが秀逸。撮影時に苦労したことや、発想の原点、見せ場、お気に入りシーンなんかが細かに解説されて、本当に楽しい。これが一点、これは映画好きにとって嬉しい仕様でしょう。で、フランス語好きにとって嬉しいのが、フランス語字幕の収録。これは僕にとって、映画『アンナ』以来の快挙です。
それがあまりに嬉しかったからでもないでしょうが、立て続けに日本語字幕、監督による解説で見て、加えてなおフランス語字幕でも見てる。やはりフランス語学習者にとって、この字幕が出せるというのは大いなる喜びです。特に『アメリ』は言い回しにこっているので、非常に勉強になります。諺も覚えられますし。
< 新しい先生の来て、授業再開 またもや国際交流会館へ行く >
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