先月、だんだん違いがわかりにくくなってきたと弱音を吐いた定点観測。いや、それはまったくもって早計だったといわざるを得ない状況になってしまった。というのは、今月頭にいったライブが刺激になって、ピッキングを変えてみたのだよ。そしたら、音が変わった。びっくりするほど変わった。
それまで繊細だなんだといってきた音が、どーん、ばーんと鳴るようになったんだわ。ボトム弦を弾けば胴全体に振動が広がって、楽器の底からどんと出て来るようじゃないか。トップ弦を弾いても、よく楽器が振動している。太く肉感的な音になった。それでいて粗野ではなく、穏やかに鳴る。いい響きの部屋で弾いたグランドピアノの、楽器そばで感じるような響きがする。
一番驚くのは和音で弾くときだと思う。音と音の溶け合い方が違う。サウンドホールからは、まるで風が吹いてるかのようなエネルギーが感じられて、いや、実際楽器の振動で空気の循環が起こっているようだ。これだけのエネルギーだから、もちろん鳴りもそれだけしっかりとあって、参った。弾きようでいくらでもよくなる楽器だと実感する。
この間、ギター奏者を仕事にしている友人の模範演奏を耳にする機会に恵まれて、その演奏も刺激になった。ポリフォニーの訓練といって、pimaの4指で和音を演奏しながら、ソプラノの強調、アルトの強調、そしてテノール、バスとそれぞれの声部をくっきりと際立たせながら弾いてみせて、私はバランスよく弾けばそれでいいと思っていたものだから、目からうろこが落ちた。確かに必要に応じて声部を強調する必要はあるんだから、そういう練習をしなければならないことにも気付いておくべきだったんだろうが、いや盲点だったね。ポリフォニーの他にも、色々と例示される演奏はやはり刺激で、私はもっと練習しようと思った。ギターの表現力はまだまだ広がると思った。私は入り口にさえ立っていない――。
と思って、がっちり練習に取り組んだのもよかったのかもしれない。楽器はまだまだ鳴る。まだまだギターでできることはある。だから私も練習に、余念なく取り組みたいものだ。楽器のもつ力をよく引き出せるような奏者になりたいものだ。
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