梅雨を過ぎて、夏、京都の夏は暑いのだ。連日、湿度計の針は60%を上回り、暑いやら蒸すやらで体力がそげ落ちる思い。体力と気力はつながっているから、自然気力も落ち込んで、そんなわけでギターを弾く時間というのがすっかり減ってしまった。
湿度計の針をにらみながら練習してみるとよくわかるのだが、湿度が高くなるほど楽器の鳴りが乏しくなるのがわかる。音の出が悪くなって、内にこもった感じといおうか、あるいはさえないといおうか、とにかく前に出てこない。そんなくすんだ音に満足いかないのは当たり前で、自然もっと出そうと手には力がこもる。しかし、こうして力で出そうとしても音は決してでないのであって、だから私は鳴らないときほど意識的に、力を抜くように心がけている。
その日は雲が一日空を覆って、今にも降るのではないかという空模様だのに、一向にそうした気配はなかった。湿度計を見れば70%越え。気温こそは高くはなかったが、人にも楽器にも決してやさしくない気候である。すっかり体調を持ち崩して、練習に取り掛かろうとしてはぐずぐずと先延ばしして、夜、ようやく楽器をとって弾きはじめたと思ったらその時だった。
右手のmおよびa指の交代でスケールを弾いていて、突然違和感を感じた。これは、あれだ。楽器の鳴りが悪いのを力でなんとかしようとしたのがいけなかった。加えて連日の猛暑、熱帯夜、眠っても疲れが取れず、全身にこもった気だるさも悪かったのだろう。睡眠不足も腱鞘炎の大敵というではないか。こうして、私は指を痛めて、二三日の間、楽器を弾けずにいた。
というわけで、九ヶ月目の定点観測は空振り。だって、ほとんど弾けなかったのだもの。弾きたくても弾けず、楽器はといえば鳴らない。夏は、夏はよくないなあと、とりわけ蒸す京都に住む私は、そんなふうに思うのであったよ。
< D. カスタム S 定点観測:八ヶ月目 D. カスタム S 定点観測:十ヶ月目 >