店頭で商品の展示が停止されている規格はSCSIだけである。
ネットでは、落札金さえ払えばUltra 160でも買えるという。
ああ、おれはハードディスクがほしいな。
と、少年がいった。
何を入れるの? と少女が訊ねた。
GNOMEだよ。と少年がいった。
あいつ見てるとシャクにさわるんだ。
Vine LyunxをインストールしたFM V。当初はメモリも少なく、Lanにも参加できない、まさに旧仕様機でしたが、数々の強化計画の末、メモリは128MBに増え、100BASE/TXボードも追加されるなど、ずいぶんよい環境が出来上がってきました。ネットにもつながるし、プリントアウトもできる。普通に使うならこれでもう問題はないといっていいでしょう。
ですが、まだ多少の問題も残っています。それは、内蔵ハードディスクに余裕がなさすぎる、という問題です。
FM Vのディスク容量は、1.2GBしかありませんでした。このマシンが出た当時では、きっと大容量だったんだと思います。そもそもはじめて買ったコンピュータの内蔵ハードディスクが160MBだったことを思えば、ものすごい容量ではありますよね。でも、残念ながら昨今のコンピュータの世界では、1.2GBはちょっと少なめといわざるを得ません。
実際、Lynuxのインストール時に多いに弱ったのも、ディスク容量に関しての些事でした。初インストール時のパーティション構成をちょっと思いだしてみましょう。
今から考えれば、無理に/homeを作る必要もなかったし、/bootもいりませんでしたね。とにかくメモリが少なかったのだから、swapを128MBほどとって、残りは全部rootでよかったような気がします。
ですが、構成をどのようにいじったとしても、容量不足という状況は変わるべくもありません。root: 1GBに無理矢理パッケージが詰め込まれていて、身動きできないほどに逼迫した状況でした。なにかをインストールする、ファイルサーバに使うなんて、土台無理な話だったのです。
というわけで、ハードディスクを増設しようという話が持ち上がります。同じ増設するなら、内蔵の遅いIDEよりもSCSIの方がいい! となると、またオークション……ですね。
SCSIボードの増設なんてはじめての体験です。右も左も分からないくらいになにも知らないわけで、まったくもって不安だらけ。FM Vのマニュアルを見ても、そもそもが古いマシンなんだから現状にそぐわないことおびただしい。となれば、情報源としてネットを活用するほかないということになりますね。
Googleで、もう覚えちゃいないくらいにキーワードを打ち込んでやって、必死の検索。その結果分かったことといえば、Adaptec社の製品は業界標準らしいということ。BIOS ROMがないと、ブートできないということ。BIOSの設定はややこしそうだということ。そして、新品でブータブルなカードは、一万円以上するということ。
微妙…… この古マシンのために、何万円もかけたくないなあ。
で、オークションに参加してみると、ちょうどAdaptec社のSCSIカードが出品されていたのでした。AHA2940UW。4,300円開始で競合者なしの模様。ドライバはWindows標準のものを使えということは、おそらくカードのみの価格でしょう。まあ大丈夫、かまいません。とにかく使えればいいんですから。
問題は、このAHA2940UWにBIOS ROMが搭載されているかどうかです。こういった情報は公式サイトで調べるのが一番早い。というわけで、いってみました、Adaptec。でもぴったりと型番が一致するモデルがないんです。生産終了しているモデルのようで、でも過去のラインナップを見ても、ぴったりと一致するモデルはありません。Macintosh用だったり、Proの一言がよけいだったり。一応、ProはBIOS ROM付きなんですけどね。でも無印がアマチュアで、BIOS非搭載モデルだったらどうしよう。
馬鹿なことばかり考えます。
本家米国のAdaptecのSCSIカードラインナップも確認しますが、似たようなモデル名はあるのに一致するものはなしという状況は変わらず。
仕方がないので、Googleでモデル名と "linux" をキーワードに検索して、かろうじて動作実績を発見。ブートも可能らしいと確認できたので、オークションに戻り、4,300円に4,300円でビッド。無事落札したのでありました。
無事にSCSIカードが到着したので、淡々とセットアップ。メモリやらNICやらですっかり慣れてしまったので、ものの十分ほどで終了する手際。なんか、嫌ですね。
さて、SCSIカードが無事認識されることも確認できたので、次はいよいよハードディスクを入手しなければなりません。というか、SCSIカードだけ買ってハードディスクがないじゃ、一体なにがやりたかったのかさえ分かりません。ハードディスク購入は、もはや必須事項です。
SCSIといってもいろいろな規格があり、規格ごとにデータの転送速度が変わってきます。できれば高速なものを導入したいと考えるのは人の常。AHA2940UWが許す最高転送速度は、Wide Ultra SCSI規格の40MB/secです。こうなれば、そのWide Ultraとやらに対応したハードディスクを手に入れたくなってきます。ですが、どこにも売ってないんですよ。
Yahoo!ショッピングで探そうと思っても、ここでは内蔵ハードディスクが規格別に分けられていないので、探すのが非常に億劫。仕方がないので、ヨドバシカメラにいってみたら、なんと今はATAとやらが主流だそうで、SCSIハードディスクが置いてない。そんなあほなぁ、とすっかり浦島太郎気分でまたまたオークションに参加。しかし、いつの間にSCSIの優位は消え去ってしまっていたんでしょうか。
オークションたって、なんでもあるというわけではありません。それこそ出品者がいてはじめて成り立つ一期一会の世界。それを落札しそこねれば、次はないかも知れないという不安も込みの、塩辛い世界です。あったら儲け、なかったらUltra SCSIで我慢するかと思っていたらば、ありました、ありましたよWide Ultra SCSIのハードディスク。Seagate製のST118202LW、18.21GBという大容量です。
入札は8,000円からで、12,000円即決。でも言い値で買うのは悔しいので、でもどうしても欲しかったので、11,750円で自動入札。これなら、即決が発生しないかぎりこいつは僕のものに決まりです。でも、競合者が発生したんですよね。最初は8,500円がとこだったのですが、終了当日に10,000円をビッドした人がいて、結局10,500円で落札でした。
でも、まあ、お買い得……でしたよ、ね。
さあ、いよいよやって来ましたよ、念願のハードディスク。ところが、なんだか微妙に大きい気がする? 僕の記憶にあるハードディスクと、縦横のサイズは同じなんですが、厚さがいやに気になる。こんなに分厚かったっけ?
でもまあ、こういうのは規格にのっとって作られているわけだから大丈夫だろうと、気楽にかまえていたら――やっぱり分厚かったんですね、増設ハードディスク用ベイに収まりません。
うわー、なんでや。
いつの間にハードディスクは分厚くなったのでしょうか? またもや浦島太郎の気分なのです。
こうなれば取れる手は三つしかありません。それは、
このあたりは、知人にも何度も相談しました。知人曰く、せっかく安く買ったのにケースで散財するのはもったいない、とのこと。で、せっかく落札したものを転売する気もさらさらありません。
となると、外部に設置案が有力になってきます。でも、そんなことは可能なんでしょうか?
ハードディスクの駆動には、もちろん電源が必要になってきます。ということは、電源ケーブルさえ届けばどうにかなるということです。ケースを開け、増設機器用に用意された電源ケーブルを確認。他のケーブル群と一緒にまとめられているのをほぐして、どれだけ延ばせるか見てみると、なんとかケースの外には出せそうです。一番上のISAサウンドボードを一段下に退避させると、ちょうどその開け放したスロットカバーから、ケーブルを引き出せました。
電源ケーブルは、PCのアッパーカバーを閉じた状態で、ハードディスクにどうにか届く感じ。でも本当によかった。これで、購入した機材一式は無駄にならずに済みます。
後は、68pinのSCSIケーブル(内蔵用)を購入して繋げるだけ。なので、繋げてみました。
どうでしょうか? ケーブル長の制限で縦置きにしかできないのが難ですが、それでも裏返しよりかずっといいです。
ハードディスクを無事(?)設置し終えて、いよいよ稼働です。といいたいところですが、なぜかSCSIのBIOSが読み込まれない。弱ったな、立ち上がらなくなってしまった。
仕方がないのでもう一度ハードディスクを外して、元の状態に戻します。そうしたら立ち上がるわけですよ。ということは、ハードディスクの問題? マシンがハードディスクを認識しない?
いよいよ駄目かと思い天を仰いだものの、やるだけはやってから転売しようと決意。SCSI BIOSの設定画面を呼びだし、ちまちまとチェックしていたらば、なんとWide Ultraに対応するという項目にチェックが入っていなかった。そりゃ、駄目なわけです。
チェックを入れてやったら、無事起動! 後は、このSCSIハードディスクを起動ディスクにするだけです。